「着物」とひと口に言っても実はさまざまな種類があり、どの場面で何を着るかが決まっています。
TPOに応じた装いをするには、それぞれの特徴や違いを知っておくことが大切。
この記事では、着物の種類と「格」について解説します。
順番に読んでいけば、初心者の方でもシーンに応じた着物を選べるようになりますよ。ぜひ参考にしてくださいね。
着物の種類
まずは基本となる着物をご紹介します。
代表的なものは次の12種類。
- 打掛(うちかけ)
- 黒紋付(くろもんつき)
- 振袖(ふりそで)
- 黒留袖(くろとめそで)
- 色留袖(いろとめそで)
- 訪問着(ほうもんぎ)
- 付け下げ(つけさげ)
- 色無地(いろむじ)
- 小紋(こもん)
- 紬(つむぎ)
- 御召(おめし)
- 浴衣(ゆかた)
ひとつずつ説明していきます。
結婚式のお呼ばれ、卒業・入学式、食事会、お稽古など「どの場面で何を着るか?」についてはこちら
TPOに合った着物〜卒業式・七五三・初詣・お茶会では何を着ればいい?
打掛(うちかけ)
打掛は、結婚式で花嫁が着る特別な着物です。
- 白無垢:真っ白なデザインで、純潔を象徴する花嫁衣裳の最高峰。結婚式でのみ着用されます。
- 色打掛:華やかな色や模様が特徴で、披露宴でも着られます。
白無垢
色打掛
どちらも厳かなシーンにふさわしく、結婚式という特別な日の主役を引き立てます。
黒留袖(くろとめそで)
黒留袖は、既婚女性が着る最高格の礼装です。
- 特徴:黒い生地に5つの家紋が入り、裾に絵羽模様(えばもよう)が施されています。
- 帯:格式高い袋帯や丸帯を合わせます。
- 着用シーン:新郎新婦の母親や仲人が結婚式で着用します。
格式高い場面での正装として、品格を感じさせる装いです。
振袖(ふりそで)
未婚女性の第一礼装で、袖丈が長いのが特徴です。華やかで女性らしい装いとして、多くの人に愛されています。
- 種類:
- 大振袖:袖丈114cm前後。結婚式や披露宴で使用。
- 中振袖:袖丈100cm前後。成人式の定番です。
- 小振袖:袖丈85cm前後。お茶会やパーティで活躍します。
- 帯:自由な結び方を楽しめる袋帯が定番です。
黒紋付(くろもんつき)
黒紋付は、喪服として不祝儀の場で用いられる着物です。
- 特徴:黒一色の生地に、背中・両後ろ袖・両胸に計5つの家紋が入っています。
- 帯:黒喪帯を合わせることで格式を保ちます。
シンプルでありながら厳粛な雰囲気を持ち、弔事の場でのマナーを体現します。
色留袖(いろとめそで)
黒以外の色を使用した留袖で、既婚・未婚を問わず着用できます。
- 特徴:上半身は無地で、裾に広がる絵柄が特徴です。
- 紋の数:
- 五つ紋:第一礼装として結婚式や式典に。
- 三つ紋、一つ紋:準礼装として祝賀会やパーティに。
柔らかな色合いが、フォーマルな場面で女性らしさを引き立てます。
訪問着(ほうもんぎ)
訪問着は、振袖や留袖に次ぐ格の高さを持つ着物です。
- 特徴:着物全体に柄が襟や袖をまたいで続いています。
- 帯:袋帯を合わせるのが一般的です。
- 着用シーン:結婚式や卒業式といったフォーマルな場面から、観劇やお食事会まで幅広く活躍します。
格式と華やかさを兼ね備え、シーンを選ばず着られる便利な一着です。
付け下げ(つけさげ)
付け下げは、訪問着に似ていますが、柄の入り方が異なります。
- 特徴:左肩にワンポイントの柄があるシンプルなデザイン。
- 帯:袋帯で格を上げたり、名古屋帯でカジュアルに着こなすことも可能です。
- 着用シーン:卒業式や七五三、お食事会など。
シンプルな美しさが魅力で、初心者にも取り入れやすい着物です。
色無地(いろむじ)
色無地は、一色に染め上げられたシンプルな着物です。
- 特徴:地紋(生地に織り込まれた模様)の有無で格が異なります。
- 紋の有無:紋を付ければフォーマルな場面にも対応可能。
- 着用シーン:卒業式や入学式、七五三、観劇や同窓会など幅広い場面で活躍します。
シンプルだからこそ、小物や帯で個性を出しやすい着物です。
小紋(こもん)
小紋は普段着として着られるカジュアルな着物です。
- 特徴:生地全体に同じパターンの柄が入っています。
- 種類:
- 江戸小紋:細かい柄で遠目には無地に見える。
- 加賀小紋:華やかな柄が特徴。
- 京小紋:自然をテーマにした柄が多い。
- 帯:名古屋帯や半幅帯を合わせて気軽に楽しめます。
日常の中で和装を楽しみたい方におすすめです。
紬 (つむぎ)
紬は、先染めの織物で作られた丈夫な着物です。
- 特徴:素朴な風合いで、普段着やおしゃれ着として着用されます。
- 種類:結城紬や久米島紬など、地域ごとに特徴的な紬があります。
- 帯:名古屋帯や洒落袋帯を合わせるのが一般的です。
おしゃれな普段着として、着物初心者にも取り入れやすい種類です。
御召 (おめし)
御召は、格式のある高級な織りの着物です。
- 特徴:生地表面にシボ(細かな凹凸)があり、さらりとした風合が特徴です。
- 種類:
- 無地御召:地紋やシボを活かしたシンプルなデザイン。
- 縞御召:細かい縞模様が特徴。
- 柄御召:繊細な小紋柄や抽象的なデザインが施されたもの。
- 絣御召:絣模様が織り込まれたもの。
- 紋の有無:無地御召に紋を入れれば、結婚式や祝賀会などの公式な場面にふさわしい装いに。
- 着用シーン:結婚式や祝賀会をはじめ、パーティ、お茶会、観劇、普段着など幅広い場面で活用できます。
シンプルなデザインでありながら上品な雰囲気を持ち、フォーマルからカジュアルまで幅広く対応できる汎用性があります。
浴衣(ゆかた)
浴衣は、夏に着る軽やかな着物です。
- 特徴:薄手の生地で、通気性が良いのが魅力。
- 帯:半幅帯を締め、下駄を履くのが一般的。
- 着用シーン:夏祭りや花火大会、カジュアルなイベントにぴったりです。
最も手軽に楽しめる着物として、初心者の入門にもおすすめです。
着物の格について
着物の格は、大きくわけると以下の4つがあります。
第一礼装 (正礼装) | 「フォーマル」 結婚式、お葬式などの特別な日や公的な儀式に 打掛、黒留袖、本振袖、中振袖、黒紋付 |
略式礼装 (準礼装) | 「セミフォーマル」 結婚式のお呼ばれや入学・卒業式などに 色留袖、訪問着、付け下げ、小振袖、色無地 |
外出着 | 「よそ行き」 お稽古や観劇・食事会などに 色無地、小紋、無地の紬、御召 |
普段着 (街着) | 「普段着」 ちょっとした外出や日常生活に 紬、御召、浴衣 |
「どの場面で何を着るか?」については以下でくわしく解説しています。
TPOに合った着物〜卒業式・七五三・初詣・お茶会では何を着ればいい?
まとめ
着物の種類と格、特徴をまとめると以下のとおり。
種類 | 格 | 特徴 |
---|---|---|
打掛 | 第一礼装 | 結婚式で花嫁が着る特別な着物。白無垢・色打掛がある。 |
黒留袖 | 第一礼装 | 既婚女性が着る最も格式高い着物。五つ紋が入り、裾には華やかな模様が描かれている。 |
振袖 | 第一礼装 振袖 | 未婚女性の第一礼装。大振袖・中振袖・小振袖がある。袖が長いほど格が高い。 |
黒紋付 | 第一礼装 | 喪服として不祝儀の場で用いられる着物。黒一色に統一され、五つ紋が入っている。 |
色留袖 | 略式礼装 | 黒以外の留袖。紋の数に応じて礼装の格が変わる。既婚・未婚問わず着用可。 |
訪問着 | 略式礼装 | 留袖・振袖の次に格が高い着物。肩から裾にかけて一枚絵のような柄が描かれている。 |
付け下げ | 略式礼装 | 訪問着の次に格が高い着物。左肩や裾などにワンポイント柄が入る。デザインは訪問着より控えめ。 |
色無地 | 略式礼装 外出着 | 一色で染められたシンプルな着物。地紋の有無や小物次第でフォーマルからカジュアルまで対応可能。 |
小紋 | 外出着 | 生地全体に同じパターンの柄が入っているおしゃれ着。細かい柄ほど格が上とされる。 |
紬 | 外出着 普段着 | 先染めの糸で織られた素朴な風合いの着物。カジュアルシーン向き。 |
御召 | 外出着 普段着 | 生地表面にシボ(細かな凹凸)があるさらりとした着物。柄や紋の有無で格が変化する。 |
浴衣 | 普段着 | 夏用のカジュアルな着物。着付けが簡単で帯や小物、履き物は他の着物と異なる。 |
それぞれに個性があり、シーンや用途に応じて選ぶことができます。
自分にぴったりの一着を見つけて、着物のある暮らしを楽しんでくださいね。